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「裁判員制度」で日本は良くなるのか

JUGEMテーマ:法律

国民の誰が望んだわけでもない裁判員制度が来年施行されようとしている。

近年の凶悪犯罪の増加に対し──この前提さえ果たして本当なのかどうかは疑わしいところだが──、「
国民の司法参加により市民が持つ日常感覚や常識といったものを裁判に反映Wikipedia「裁判員制度」の項)させるために導入されようとしているというのが、どうやら実情のようである。

しかし、有罪・無罪の判断や量刑について“日常感覚”(多分に“感情”を伴ったもの)を基準に置いていたのでは、おおよそ客観的な判断が困難となり、“不当に重い”量刑が科せられることになりはしないのか。

マスコミの報道
(特にテレビの“報道バラエティー”と言われるジャンルの番組)一つ取っても明らかなように、容疑者に対しては容赦ないバッシングを浴びせるが、その犯罪に至った経緯やバックグラウンドに深く入り込み、社会の病巣をえぐり出さない限り、根本的な解決にはいつまで経っても至らない。

裁判員制度は、

世界に類を見ないモンスターになる


「会社をダメにする法令遵守」の郷原信郎氏に聞く(2)


2008年11月5日 水曜日

「平成21年5月21日から裁判員制度が実施されます。裁判員制度とは, 国民のみなさんに裁判員として刑事裁判に参加してもらい,被告人が有罪かどうか,有罪の場合どのような刑にするかを裁判官と一緒に決めてもらう制度です。 国民のみなさんが刑事裁判に参加することにより,裁判が身近で分かりやすいものとなり,司法に対する国民のみなさんの信頼の向上につながることが期待され ています」


 最高裁のホームページでは裁判員制度についてそう説明されている。あれよあれよというまに採用が決定され、実施も目前にせまっている裁判人制度は、独特の法システム社会である日本に果たしてなじむのだろうか。


*  *  *  *


郷原 まず国民の司法参加は、やった方がいいのか、やらなくてもいいのか、二分法なんですよ。そうしたら、やった方がいいということになる。なぜなら、外国の多くの国でやっているから。


武田 最高裁のHPでも「国民が裁判に参加する制度は,アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア等でも行われています」とありますよね。


郷原 やっていないのは日本だけだから、やった方がいいとなります。そこでまず、エンジンがかかるわけですね。じゃあ、どういうふう にやるのか。その制度設計には日弁連の上の方を占めている人権派弁護士のように、この国の司法の根幹部分を変えてしまいたいと思っている人たちも絡んでい たわけです。

 彼らは職業裁判官中心の司法の世界を変えたいわけですね。治安維持的な裁判に対してずっと抵抗してきた人たちは、それを崩してしまいたいと思って いて、そのために裁判官の手から裁判を国民の手に取り戻せということになる。そうすると、陪審制という話になるわけですね。とにかく全部、国民から選ばれ た陪審員が決めればいいんだという話になる。

 ところが、そこまでの制度は裁判所は絶対に認めない。でもまあ、参審制ならいいだろうと妥協した。これがとんでもない方向に発展する。


武田 たとえばどのあたりのことでしょう。


郷原 まず数のバランスです。アメリカの陪審員制のように12人の陪審員全員が国民から選ばれるというほどじゃないけれども、裁判官 3人に裁判員6人という結構な人数を取り込むことにした。しかも裁判員を選挙人名簿から無作為に選ぶわけです。ヨーロッパの参審制は団体とかの推薦で、一 応フィルターを掛けた形で裁判員が選ばれるんです。しかも任期制です。日本の裁判員制度はアメリカ方式を選択して、事件ごとに素人を無作為で選ぶのです。

 ただアメリカの場合、陪審員による裁判を受けるかどうかは、被告人が選択するんですが、日本は被告人の権利とは関係ないということで選択権はなし。

 もう一つアメリカの陪審制と違うのは、そこにヨーロッパでやっている参審制のように有罪無罪の判断だけではなく必ず量刑も含めて判断するというと ころです。でもヨーロッパは死刑を廃止している。日本の場合は死刑がありますから、死刑か無期かという職業裁判官ですら尻込みするような量刑を裁判員が判 断する。

 これはもう、国際的にも類を見ないモンスターみたいな制度ですよ。


武田 欧米折衷なんだけど、悪いところだけ集めてみましたって感じでしょう、死刑の存廃についてアンケートを採ると死刑存置論が優勢らしいですけど、自分で判決下すとなるとびびりますよね。


制度がおかしければ、運用はもっとおかしくなる


郷原 ものすごく重い制度になったので、当然それに対して、国民の側は、参加したくないという声が上がる。そこで最高裁が何を始めたかといったら、裁判員の負担をできるだけ軽くするということです。

 そんなに気にしなくても簡単ですよ(笑)。すぐ済みますよ、せいぜい3日。長くても1週間で済みますよとなるわけです。要するに最初から3日間ツ アーの日程でスケジュールを組んで、その日程でできる範囲内で審議を終わらせようということです。そうじゃないとツアー客が集まらないからです(笑)。


武田 最低催行人数があるわけですものね。裁判の場合も。


郷原 それで、3日で収められるようにしようと思うと、事前に争点を整理して、1日目は何、2日目は何、3日目は何と審理の予定を詳 細に決めておかないといかんわけです。ところが、やっぱり実際の事件って、そんな単純なものじゃなくて、証人尋問でいろいろ調べていたら、最後のころに なって思いも寄らない事実が出てくることもあるんですよ。

 で、どうするか。1つの方法はツアー期間を延長することです。でも、これは期間を限って仕事をやり繰りして来てもらっているので難しい。そこでも う1つ別のツアーを組んでやってもらう。これは法的には可能なんだけど、まずいでしょう。だって、最初からツアーに参加していない人が途中から出てくるわ けですよ。


武田 急に引っ張り出されたって、それまで何も見て来ていないんだから、これはできない。もはや同じ裁判ではない。


郷原 そうすると、結局、最初の日程で何とか終わらせようという話になってしまいます。延長なしで終了して判決です。それまでの審理 の結果だけで判断してまうということです。法律上は必ずそうなるということではないんですが、制度の組み立てに問題があるので、どうしても、そういう雑な 裁判になってしいかねないということです。


武田 重い刑だけが裁判員制度の対象になるというのに、そんな体制では困りますよね。たたでさえツアー期間(笑)が限られていて急がされているわけだし、まさにプレゼン能力に長けた方が勝つようになる、そういう状況になって来かねないですね。


郷原 実際そうなっているんですよ。今、東京地検では、裁判員制度に対応する部が裁判員制度の対象事件を捜査から公判まですべて扱っ ているそうですが、そこはものすごく人員が増強されていているそうです。普通は1人の検事が月間に何十件も担当するのですが、その部の検事は担当事件の数 が極端に少なくて、あとは何をやっているかといったら、プレゼンの練習(笑)。


武田 PowerPointを作ったりして(笑)。


郷原 この間、裁判所や検察庁の幹部の会合でで講演をしたんです。そこは、その地域の高裁長官検事長、地裁所長とか、検事正とか、み んな集まっていました。僕はいつものように「法令遵守が日本を滅ぼす」というタイトル講演をやったんです。その後、懇親会のときに、昔一緒に仕事をしたこ とのある、私より少し先輩の検事正が、「郷原、お前の講演はうまい、話がうまい、お前の話し方をうちの公判担当の検事に教えてやってくれ」と(笑)


武田 うまいかへたかなんですね。正しいか正しくないかじゃなくて、プレゼン問題にすり替わっちゃっているわけですね。しかしそんな 裁判員制度を「司法を国民に取り返すべきだ」という人権派とか戦後派の法曹人が主体的に関わることで進めてしまったわけでしょう。皮肉な構図ですよね。ぼ くは清潔な人柄の人権派の法曹人には敬意を持っていますが、あるシステムの中に彼らがはめこまれると、最初に望むものとは全く違うものを出力してしまう怖 さを彼ら自身にもっと認識して欲しいとも思っています。そこに無頓着だと「地獄への道には善意が敷き詰められている」ことになり得るわけですよ。


NBonline(日経ビジネスオンライン)より一部抜粋

at 09:07, もーちゃん, 裁判員制度導入

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