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模擬裁判では量刑が重く─裁判員制度は正しく機能するのか

JUGEMテーマ:裁判員制度

いよいよ来年の5月に始まろうとしている“裁判員制度”。

有罪・無罪や量刑は客観的かつ冷静に法に則って判断されねばならないものであるはず。

私が以前から危惧していることがある。

  • 判断材料となる“情報”が正しく裁判員に提供されない、つまり被害者/被害者の片方に有利/不利になるような偏った情報のみがもたらされることはないのか。
  • 裁判員が冷静さを失い感情的になり、不当に重い量刑を主張することはないのか。
  • その結果、最終的に重い量刑を主張する裁判員に押し通されてしまうことはないのか。

裁判員制度による模擬裁判を経験した下記引用記事の著者によると、後者2点については現実のものとなっているようである。

アメリカにおける“陪審員制度”の起源は、
イギリスによる植民地時代、本国に有利な判決を行う裁判官に対抗して設置されたことによる

また、運用面については、有罪か無罪かまでしか判断しない。

ところが今回日本で導入しようとされている“裁判員制度”は、有罪/無罪だけではなく量刑までも決定しようというものである。

最近の世論動向を見ていると、凶悪犯罪──まさに、“裁判員制度”の餌食になるタイプの事件──に対しては重罪を求める傾向が極めて強いようである。

だが、考えてもみよ。

犯罪に至るまでにはそれなりの理由や原因があるはずである。

それらを勘案せずに、単に“実行犯
を重罰に処したところで、根本的な解決にはならず、“トカゲのシッポ切り”で終わってしまうのがオチである。

それに、仮にこの
“裁判員制度”のおかげで“重罰傾向”が定着したとしても、犯罪数が減少することはない。

犯罪人が犯罪を犯そうとする時に、

「こんなことをしたら死刑になるかもしれないから、やっぱりやめておこう。」

などとは決して考えないからである。

“裁判員制度”導入の真の目的が何なのかは知らないが、意義のある制度だとは到底思えない。

会社員なのに裁判員に選ばれたら、どうする?



 裁判員制度が2009年5月21日からスタートします。11月末には裁判員候補者の名簿に載った人への通知が行われる模様です。大半の方は、仕事を休まなくてはならないことや人を裁くことへの戸惑いから「選ばれたくない」と思っているようです。


 そのような中で、突然このような通知が来て、慌ててしまう方が多いのではないでしょうか。理由なく呼び出しに応じなければ10万円以下の罰金ということですから、穏やかではありません。


裁判に参加できるのは、大企業に勤めている人ばかりに?


 企業に対しては、社員が裁判員に選ばれた場合、心おきなく参加できるような環境作りをするよう協力を呼び掛けています。裁判員として参加するために会社 を休むことは法律で認められており、不利益な扱いをすることは禁止されています。就業規則に裁判員休暇を定める企業も増えているようです。


 裁判員に選ばれた社員のための有給休暇制度を新設するところもあります。日当は1日当たり1万円以内で、午前中に終了した時は減額されることがあ るようです。交通費は所定の計算方法で支給されますし、必要に応じて8000円前後(地域によって異なる)の宿泊費も支給されます。また、裁判所への行き 帰りに事故にあった場合、非常勤の公務員扱いとなり、国家公務員災害補償法に基づいた補償が受けられます。


 しかし、自営業や中小零細企業にお勤めで、とても休める状況ではない方もたくさんいらっしゃると思います。


 やむを得ない事情があれば断ることもできますが、その事情とは、


・ 重い病気やケガ
・ 父母の葬儀など
・ 同居の親族の介護や養育
・ 事業に著しい損害が生じる恐れがあること


 といったことです。いくら国民の義務とはいえ、仕事に差し支えて多大な経済的損失が発生しては元も子もありません。仕事を理由に断るには、自分に代わる人がいないかどうかがポイントです。また、事業所の規模が小さいほど、仕事への影響は大きいと見なされます。


 そうなると、結果として裁判員に参加できるのは、休暇制度の整った大企業にお勤めをしている人が多くなってしまうのではないかということが心配です。最終的にはクジで決めるので、裁判員の男女比が考慮されないことも気になります。


プロの裁判官より裁判員の量刑の方が重くなった模擬裁判


 一昨年の秋、裁判員制度を控えて全国で行った模擬裁判の裁判員役として裁判を経験しました。その時に感じたことは、大企業にお勤めで効率よく会議をこなしていくことに慣れた人は、効率よい意見に誘導されてしまう危険があるのでは、ということです。


 また、立派で、“ピカピカ”の経歴をお持ちの人は、不幸にして犯罪の当事者になってしまった人(加害者・被害者双方)の気持ちは、なかなか理解できないのだろうな、とも感じました。


 中でも、法廷での審理を受けて別室で評議を行う際、ある裁判員役の方が「(調書の段階で)自分がやってもいないことをやったなんて言うわけない」とおっしゃったのが印象に残っています。


 まず無罪か有罪かを決めるのは多数決です。有罪となれば量刑を決めるのも多数決です。プロの裁判官3名、裁判員6名の計9名です。


 私が経験した裁判では、一つひとつの“多数決”を積み上げていくうちに、あれよあれよという間に罪が重くなり、結果としてプロの裁判官2名が出した量刑より裁判員の出した量刑の方が重くなってしまいました。


 私ともう1人の裁判員役は、最初から「無罪」を主張しており、量刑の段階では執行猶予を付けましたが、多数決で見事にひっくり返されました。自分は無罪だと思っているのに、その後の量刑判断にも参加しなくてはならないのは、精神的にもきつかったです。


最初は「無罪」と判断した人が後に「有罪」と…


 また、不思議なことに、最初の段階で「無罪」の判断を下した裁判員が、量刑の時には有罪を主張した人たちと同等の判断を下していました。


 量刑を判断する前に、「傷害罪」「強盗傷害罪」など罪名と量刑の関係、主な事件の背景などが示された過去のデータを見せていただきました。恐らく、罪名が確定した段階で、過去のデータから、それに見合う懲役年数を考えた結果のことだったようです。


 当初無罪だと思ったにもかかわらず、その後、多数決で判断を積み上げていく中で、傷害罪で済んだかもしれないものが、強盗傷害罪に“格上げ”され、過去 のデータとの整合性を重んじた結果、思いもかけない重罪の判断を下してしまう――。なんとも後味の悪い思いをしたものです。


少数意見を堂々と主張する勇気が必要


 裁判員として参加するのは国民としての責務だと言われます。確かに国民一人ひとりが裁判の意義を考えることは大切なことだと思います。この制度を 心待ちにし、導入そして周知のために多大な努力を払っている弁護士の方たちは、市民感覚を入れることで調書裁判、人質裁判からの脱却の1歩となると期待し ています。「力及ばず無罪を勝ち取れなかった方たちの顔が思い浮かぶ」と涙を浮かべる方もいらっしゃいます。


 しかし、結果として人前で臆せず話せる人や自信満々の人の意見に流されることになれば、市民感覚を入れたというアリバイが残るだけで、本来の目的は遂げられないのではと、危惧しています。


 納得のいかない結果が出てしまった時、「あの時キチンと主張しておけば」とか「あの一言を言わなければ」とか、後々、裁判員が心に傷を負うことに もなりかねません。国民の責務を声高に言う前に、幼い頃から自分の意見を的確に言葉で表現する訓練の場を提供することが国の責務ではないでしょうか。


 そして、たとえ少数意見でも堂々と主張する勇気、自分と異なる意見も冷静に受け止めて判断する勇気を育む環境づくりが、裁判員制度を意味あるものにする欠かせない要素だと思われます。


自分の頭で考えるきっかけになれば


 裁判員制度の導入のメリットとして私が期待することを最後に1つ言うならば、個人が報道を鵜呑みにするだけではなく、裏側を考えたり、自分の頭で 考えようと努力したりするようになることかもしれません。ワイドショーなど、テレビからの情報だけで物事を判断していては、真実は見えません。


 金融商品選びも同じです。金融機関の営業トークだけを判断材料にして、大切な財産のすべてを相手に任せてしまってはいけません。それが自分の暮ら しにとって役立つものなのかどうか、自分自身で使いこなせるものかどうかを、様々な視点から判断し、自分の意見をきちんと相手に伝える必要があります。


 裁判員制度が、メディアリテラシーと“お金リテラシー”の両方を高めるきっかけになることを、期待しています。


NB(日経ビジネス)online

at 10:24, もーちゃん, 裁判員制度導入

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